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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑭

あまりの寒さにじっとしているのが辛いが星空から目が離せない。

辺りを見ても暗くて誰の顔も見えない。
でも、時間はあるはず。突入予定の時刻までは。

23:09
突入12分前になった。ガンガンと音がして、I見氏がドラム缶の火を落としている。
頬に当たる炎の光が息を潜めて、周囲の気温が一気に下がった気がした。

そこにはむき出しの砂漠の夜が横たわっていた。
星々が鋭い光を放っている分、明暗のコントラストが強かった。
ここには間接光がないのだ。地上がこんなに暗くなるとは。
隣の廃屋も闇に溶けて、じっと星空を見上げているよう。
正しい表現か分からないけど、地平線の向こうまで、まるで広大なプラネタリウム。

撮影のため、ビデオカメラは三脚に据えているのだが、実はデジタル一眼の分の
三脚が無かった(!)ので、スーツケースを借りて無理やり台座にしていた。
まず、目標星のアークトゥルスを捉えるために一眼の電源を入れてファインダーを覗いてみた。
クーパーピディの試写で感じていた不安が的中した。
やはり、この一眼は視野角が狭い。 
18ミリ相当のレンズだから広角のはずなのに。
(この原因は帰国後に理解した。)
一か八かアークトゥルスだけを狙ってフォーカスするしかない。
10分後の位置を見越して、ゲンマと組んだ逆三角が視野の真ん中に来るようにカメラを固定し、
マニュアルフォーカスにしてピントを無限側にいっぱいまで回しレリーズを伸ばす。
シャッタースピードはバルブモード、ISO400、F値4.0。
どうか、この狭いファインダーの中にはやぶさの軌跡を捉えますように・・・。

そしてスーツケースに躓かないよう気をつけながらビデオカメラの電源を入れた。
こちらは夜視モード&花火モードにしてある。
やはりモニターは真っ暗、しかし、やはり星の一片の輝きも捉えられていない。
逆にバックライトの漏れ光が眩しいくらい。
ビデオも一か八かに賭けるしかない。
バッテリー節約のため、一旦スタンバイモードに。

木の葉のざわめきも無い。風の通り過ぎる気配も無い。
コウモリの鳴き声だけが頭上を飛び交う。
冷気が深々と体温を奪っていく。その音が足元から聞こえた気がした。

本体とカプセルを見分けることなんて出来る…?
はやぶさは約1m×1m×1.2m程度の長方体、カプセルなんて約40センチ?
一瞬で大気に溶けてしまいそう。
爆発する様に輝いて見えるのかな。
火花の様に小さく弾けて消えるのかな。
遥か100km先のそれは地上から見えるのかな。
見落とすくらい仄かな光だったらどうしよう。
視力が悪いことが悔しい。
目を凝らして探してるうちにはやぶさが散ってしまうかもしれない。

懸命に頭の中で、様々なシュミレーションをする。

そして突入位置はあくまで予測のもの・・・。

腕時計を見た。
蛍光塗料の針が示した時刻は23:15
突入6分前

また見る。
突入5分前
乾いた空気を吸いこむ。そして、
「ビデオスタートします。」と小さくつぶやいた。



つづく

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑬

はやぶさのカプセル切り離し時刻は過ぎた
予定通りシーケンスを完了できただろうか…。
この時、不思議なことだが、はやぶさの最後について感慨に浸る雰囲気はなかった。
高揚と疲労のせいだろうか。期待と不安のせいだろうか。
まな板の上の鯛になった気分だった。

パソコンの起動がカリカリと進まず、幾ばくか時間が過ぎてしまった。
結局、全話観ると帰還に間に合わないので、数話割愛して1話、4話、5話、最終話をセレクト。

どうして皆にDVDを観てもらおうと考えたのか。
まあ、正直なトコロ自分が休める時間が欲しかったという理由もあった。

初めての海外ドライブで大型車の長距離運転。野生動物と衝突の危険。
天候不順。ダート走行。友人らの命も預かっている。
ここまで走った距離、1,700㌔弱。
そして、旅程が短い仲間もいる。
今夜中にこの村を出発しなくてはいけないのだ。

何より、絶対、はやぶさ帰還の瞬間を見逃す訳にはいかない
満身創痍で地球に辿り着いたはやぶさが使命を果たし消え去ってしまう姿を、
日本人として、しっかりとこの目で見届けたい。
そのためにここに来た。

だから今は休息が欲しかった(笑)。

……。
どうやら休めたようで、自分には2時間ほど記憶がない。
パソコンが不調で何度も止まるわけだけど、目は瞑っていられた。

最終話、地表に「オカエリナサイ」のイルミネーション。ファンファーレと共にエンドロールが流れる。
みんなウトウトしていた。
しかし作品から伝わってきた何かが有ったようで、
そして、目の前に迫っている現実に背を押されたのか皆一斉に車の外に飛び出した。
主人公は1万2千年かけて地球に帰ってきた。
はやぶさは7年掛けて地球に帰ってくる。
これから本当の「オカエリナサイ」を伝えるんだ。

時刻は現地時刻22:55、帰還まであと25分

「寒っ」「寒いって」
車外は一段と冷え込んでいた。間違いなく氷点下を下回っている。
車の中とは天国と地獄だった。
I見氏が急いでドラム缶の火を起こす。
種火は残しておいたのでこの寒さでも火勢はすぐに戻った。

車外灯を点けて機材チェック。空気は乾燥しているので機材に霜が降りていることはない。
北の空を見上げる。快晴を維持!
…いや、僅かばかりの薄雲せいか透明度が落ちてきているが、観望に支障はない。

この時刻、既にはやぶさは地球の影に没入していて、全機能を停止している。
シーケンスフルコンプリート。
全てを終えた彼は何を思い、地球を見つめているのだろう。
そして慣性で飛んでいるコースは、一直線にこのウーメラ砂漠を目指しているはずだ。


時刻は23:05、帰還まであと15分
火の明るさに引き寄せられたのか、星空の中をコウモリがキッキッと鳴きながら飛んでいる。

目印になるアークトゥルスはさっきより左手(西)に移動して、高度を上げている。
資料の図に示された位置に来ていた。
全ての星が本当に図の位置どおりだ。

私達がやってきた東の空に昼間見た雲が戻ってきていた。
そして北西の空も少しの筋雲が出てきた。上層雲だ、高い。
しかし、はやぶさは更に遥かその上を飛んでくる。

大丈夫、覆ってはこない。このまま視界を維持出来そうだ。
皆それぞれ配置に付く。
もう、だれも動かない。


つづく

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑫

緊急退避、こんな時の為のキャンピングカー!
6月は秋口、砂漠の気候ならば真冬に近いことを予想済み。
カーテン引いてエアコンかけて、5人もいれば、砂漠の氷点下でも車内は充分に暖かい。

ただ残念なことは、床がすっかりダスト塗れ。まるで小学校の踊り場の様に滑る。
食器を洗い係以外で分担して車内清掃。
クッションシートも軽くはたく(あまり強くはたくと埃のように砂が舞うので)。

車内が暖まる頃に掃除も一段落。
後方デッキにテーブルもセットして、ボトルオレンジジュースやVBビール、
インスタントウーメラコーヒー(曰く付き)を淹れて、みんなでホッと一息。

おかえり号の後部デッキにはDVD内蔵液晶テレビが装備してある。
ウーメラのキャラバンパークで過ごした夜は、
某北海道バラエティー番組のDVDを流しながら夕飯を食べた。

実は、食事の時にみんなに尋ねていた。
「オカエリナサイの文字を入れ込んだパターンのラミネートも車に貼ってるんですが、気が付きました?」
「あ、何かの昔のアニメでしょ?」
「一応、はやぶさ好きが反応するアニメらしいから、とりあえずYoutubeでざっと。」
「まだ見たことないです。」

みんなの反応はまずまずだとばかりにニヤリ。
こんなこともあろうかと!
「もし良かったら、『トップをねらえ!』持ってきてるんだけど、突入までの時間に勉強(笑)しませんか?」

グレイハウンド到着組は日本から弾道行動なので、疲労度が高かった。
しかしこの時間は特別な時間。皆でテンションを上げて帰還までの時間を共有してみたい。
もちろん眠くなったら寝てもらうつもり。
そういう意味でも提案。

「じゃあ、皆で観ましょうか」
ということで、はやぶさ帰還タイムまでまんじりとしない空気の中、押し付け企画がスタートした。

…が。
車載プレーヤーにDVDを挿入しても、再生が始まらず読み込めない様子。
交互に何度もイジェクト、スタートボタンを押す。
ダメだー。アウトバックの走行ストレスがプレイヤーを壊した!?
(実際は中国製のプレーヤーのリージョン設定の甘さが原因とのこと)
サラウンドスピーカーで観られないのは残念だけど、ここで時間掛けても
仕方が無いので、ノートPCにスイッチング!
ドライブがブンブン騒がしいのはご愛嬌ですね。

準備の間、皆ははやぶさカプセルの話題で盛り上がってた。
切り離しが成功していたら、秒速1センチの速度で本体から離脱、
3時間後の大気圏突入時には1kmほどの距離を先行して大気圏突入する計算。
切り離しが失敗してたら、本体諸共大気圏突入と聞いている…。
どちらかによって見え方が大きく変わってくるだろう

そして、このシーケンスを持って、サンプルリターン計画「はやぶさ」の全てが完了する…。

出国前、某巨大掲示板に
「カプセル放出後、はやぶさには最後にやっとたどり着いた地球を見せてあげて、
可能なら写真を撮らせてあげさせたいな。」
と書き込んだら、
「それ、まんま萌衛星図鑑の「かぐや」のパクリ(この時点で萌衛星図鑑は未読)」
「ミッション終盤に無用なリスクは背負わないはず」
等とレスされて、しょんぼりした思い出。

のちにこのエピソードが事実となって日本人の記憶に残ることになるとは。

PC内蔵スピーカーからUSBスピーカーに切り替えて、ミニ映画会がスタート。
時刻は現地時刻20:40を過ぎた頃…。



つづく

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑪

そんなこんなでも、記念すべき日。
お酒を控えていたS木さんを除いて、オカワリ~!

ここでジャパニーズサラリーマン飲み会がウーメラの夜空に展開された。
「おっとっとっとっとー」「まあまあまあ」「いやいやいやいや」
「じゃじゃ今度はこちらが」「これはこれは」
オーストラリア在住のI見氏が泣いて喜んだ(笑)。こういうのが懐かしいらしい。
確かにオーストラリアじゃ絶対聞けない掛け合いだ。

おっと、しかしこれはこの後の飲酒運転に響かないのか?
「厳密にはもちろん×なんだけど、ちゃんと運転が可能なら自己責任」
「マジっすか(笑)」
「つまり事故らないでね」
(えっと、この時のI見氏の発言については記憶が曖昧です。)
「いずれにしても、アウトバックでは全てが保険対象外

さあ、食事にも取り掛かりましょう。
AUSの各種ビールも取り揃え(一番美味しかったのはVB)。

特に和風野菜炒めが大人気だった。日本の味に飢えてました。
「そういえば車の話で思い出した。」
「なんですか?」
「Tarcoolaに来る途中で車が滑ったんだよ。」
「おかえり号も滑ってばかりでした」
時速100km/h位で」
「え?」
「どんどんアクセル踏んでたら、クルッと360°スピンした」
「・・・よく無事に辿り着きましたね」
「遭難してたら多分君らに見つかると思うし」
「一本道ですしね。でも、プリメーラの轍ってあまり気が付かなかったです」
「まあ、こんな日に事故ってられないよ~」
※コメント欄に御本人の注釈がございます。ねこ蔵さんありがとう。

みんなお腹空いていたんだね。誰も彼もが強行軍。
料理が冷たくなっていく。半端ない冷え込み。それに打ち勝て、みんなの食欲!
スピンマスターからカップラーメンの差し入れも有りましたが、でもその前に
お腹いっぱいになりました。
残ったウーメラ風パンはまた帰り道に。

時間は20:20過ぎ。
間もなく地球上空ではカプセルが切り離される。シーケンス予定時刻は20:21。
「そろそろカプセル切り離した頃ですね」
「成功したのかな」
「そういえばTCM-4は?」
「それはクリアしたよ」
「良かった~~」
砂漠にいると情報弱者…。

ん?DOCOMOの携帯が繋がる!?
仲間の一人が携帯を開いて驚く。
確かにAUSのキャリアを経由してだが、繋がっていた。
画面は某巨大掲示板。情報収集には手軽なサイト。
スレ番号は50台。どんどん増えていく。
…不思議。外国の砂漠の中で、携帯の画面は日常のもの。

「うちらもウーメラ砂漠にいるって書きこんでみようよ」
通信速度はとても遅い上に繋がりにくく、また通信料もべら棒だろう。
それでも、持ち主にお願いして書きこんでもらった。
ここに居る事の、小さな証明。
はやぶさを見にウーメラ砂漠のタークーラに来てます。
こっちは晴れて満天の星空です。寒いです。
みたいな事を書き込んだ記憶。
それでも、日本は最大の盛り上がりを見ているこの時間、我々の1bit通信運用の
書き込みはアッという間に埋もれてしまった。
どなたか、時間のある方は掘ってみてください^^

本格的に身体が冷えてきた。
地球帰還まで、まだ2時間30分ほどある。
とりあえず、片付けてみんなでおかえり号に退避しよう。
焚き火の火を落として火種にしておく。
撮影機材はスタンバイ状態にしておいて、残りは片付けた。

実は、この後に簡単なお楽しみイベントを仕込んでおいたのだ。
おかえり号のエンジンをかけ、ヒーターを全開にした。



つづく

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑩

廃村の一角が、突然わいわい賑やかで、きっとTarcoola村の家族は驚いているだろう。
実は、飛び入りでMixa隊にお見えにならないものか、ちょっと期待していた。

日本が打上げ、7年かけて地球に戻ってくるはやぶさを、オーストラリア人の彼ら
どんな気持ちで見届けてくれるのか非常に興味があったし、実のところ、
日本の研究者たちが成し遂げた、その姿を心に刻んでいただけることになれば
こんなに嬉しいことはない…。
I見氏が挨拶も済ませているしね。

しかし、彼らは最後まで我々のところには現れることはなかった。
きっと、JAXA光学観測班に対するように、私達にも気を使って下さったのだろう。

改めて皆で観測資料を確認する。
資料は先程のグレンダンボ付近での星天予想図。
この村は一番はやぶさリエントリポイントに近い。
見え始めの位置は読めないけれど、逆さうしかい座付近は間違い無く通過しそう。
可視の時間はおよそ2分間弱の予想。

はやぶさは、果たして、流れ星のように、すうーっと流れていくのか、
シリウスのように明るく輝きながらアッという間に東へ消え去るのか、
パチっと弾けて一瞬で見えなくなるのか、
遠すぎて光ったかどうかも気づかないまま、満天の星の空に埋もれていくのか…。

IMG_0398.jpg












(左側:逆さうしかい座、右側:逆さかんむり座。一番明るい星がアークトゥルス)

するとおかえり号の中から呼ばれる。Mさんが大きなお皿を持って降りてきた。
辺りに漂う肉の焼ける美味しそうな匂い。
砂漠のど真ん中、野外とは思えない数々の料理の登場ですよ!
キャンピングカーの真骨頂、ガスもレンジも冷蔵庫も完備。温かい料理はお手の物。
星空に夢中でお腹が空いていたのをすっかり忘れ…ていないんだからね!!
恐れていたオーストラリア名物、砂漠のハエの群れは襲ってこなかった(一安心)。

6月13日本日の献立
・ボイルドポテト、ウーメラ風
・ポトフ、ウーメラ風
・グリルハーブウィンナー、ウーメラ風
・オージービーフ炒め、ウーメラ風
・野菜炒め、
・各種ウーメラディップ
・胚芽パン、食パン、とにかくウーメラ風
(全てWoolworthスーパーで買い出した物)
醤油とマヨネーズは各自お好みで。

IMG_0394.jpg












さあさあ、プラスチックコップが配られる。小さなシャンパンを開栓!
そしてシャンパンをコップに注いでいく。リポDが配られる(これはまた後の出番)。
おっと、みるみる料理が冷めていく。恐るべし夜の砂漠。
ささ、早く乾杯を。

「では!MIXA隊と寄せ書きのTarcoola村無事集結と、はやぶさ突入の成功、カプセル切り離し成功、
 そして我々の見届けの成功を願って!乾杯!!」
「乾杯!!!!!!」

早速空いたコップにシャンパンおかわり。どうぞどうぞ。

買い込んでおいたオーストラリアのビールを放出!数種のラベルから各自選んで~
「こっちも飲んでみてください。あ、それはイマイチだと思います。美味しかったBeerはこれで、
イマイチだったのはこれで…VBは値段の割に旨いですし」

「そんなに飲めないよ…。」

…呑ん兵衛なのは自分だけのようだ。



つづく

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑨

おしゃべりをしながら、みんなで薪になるものを探しに行く。
一人はおかえり号に戻って、はやぶさ晩餐の仕度に入る。
もうお腹がペコペコ。無事到着して安心したからなおさらだ。
食材は余してある。この人数でも十二分に振る舞える。(…ここで消費しないと持ち帰りになる。)
拾った薪を火にくべる。
乾いているからよく燃える。長丁場なので、なるべく多めに調達してきた。

さて、私は広げたテーブルの上にを日本から持ってきた宝物を並べていった。
皆が揃ったところで、さあ、お披露目♪

まずは、これ!「はやぶさ迎え酒~!(ドラえもん声)」
(オレンジゼリー×企画日本酒蔵)のコラボ商品で「はやぶさver.」純米吟醸(山廃)の方。
おお~、と歓声が上がり、撮影会(笑)。

S木氏「リポビタンDも持ってきました。これはまた後で。」
おお~、と再度歓声が上がる。シーシェパードが活発なこの時期によくぞ検疫を乗り越えてきた。

これらははやぶさを無事に見届けた時のお祝い用だ☆

それから、ウーメラアテンダントのI見氏に、私から贈り物。
「発売されたばかりの”アオシマはやぶさプラモデル”です。海を越えてきたのでちょっと箱が潰れましたが、差し上げます。」
「え!マジで持ってきてくれたの!?すっげーーーー!ありがとう!マジに持ってくるとは!」

「この本に寄せ書きしてもらいました。」
クーバーピディで、著者含めはやぶさ開発に携わったNH氏やRN氏ら日本人チームで寄せ書きした「恐るべき旅路」の表紙を捲る。
「松浦さん来てたの?」
「今朝、偶然クーバーピディで合流出来て、はやぶさ帰還記念に。」
「松浦さんが来てたとしても、出会えるなんて凄過ぎる。」
「ニコニコ動画の中継チームや、中の人も自腹で来てました」
「…おおお。」

「あそこ、キャンピングカーに貼ってある出迎え目印、はやぶさのラミネート!託されたミッションパッチシールも一緒です」
「mixiで受付してた時の?」
「ウーメラに来られなかった人達の名前も連れてきました。」
「うちらの名前もあるね!」
「皆で一緒に、ここまで来たんですよ。」

そして、はやぶさラミネートの下でアイテム並べて撮影会!

ひとしきりお喋りで盛り上がった所で、各自、撮影機材の設置やテストを始めることにした。
撮影機器の設置ポイントはおかえり号の北側、北天の空を狙う。
高校時代から愛用している三脚を立て、前面に広がる真っ暗な地平線を見据える。すると、
「WPA内の奥、ちょっと西の方にオレンジ色のライトが見えますね?」
「あそこは相当遠いね。きっとオーストラリア軍だよ。」
「ずっと動かないし、こんな砂漠のど真ん中で待機できるのは軍くらいだよね。」
(今思えば、あの位置からだと高知工科大学山本教授の地震計チームだったのかもしれないが)
WPA周辺では豪州軍のエスコートが付く可能性が示唆されていたが、Tarcoolaでそれは無さそうだ。
先発のJAXA光学班のお陰だろうか。

Mixa隊設置機材は、三脚2基、一眼レフカメラ3台、デジタルハイカム1台。あとは手持ちのコンデジ2台。おっと各自の携帯電話カメラ。
Standard社ハンドレシーバーでビーコンの周波数FM●●●MHz(公式発表済)変調にセット。
さらに、観測用資料をチェックする。資料の内容は以下の通り。
・委13-3「はやぶさ」試料回収カプセルの再突入に係る計画について 平成22年3月31日付
・プレスリリース 「はやぶさ」地球に接近中 平成21年12月17日付
・プレスリリース 「はやぶさ」、苦しみながらも地球帰還へ、目下運用中。 平成22年2月16日付(?)
・有志から贈られた手作りの演算資料、予測資料、経路資料、南半球の星図等々…。(コ◯氏始め、諸氏に心から感謝。)

再度、DS星空ナビで、星の位置を確認する。右の空、北東方向にうしかい座とかんむり座。
はやぶさの突入軌道に変更が無ければ、あの二つの星座がはやぶさ通過ポイントの目印になる。

アークトゥルスがとても明るい!イザールも!かんむり座のゲンマなんて、こういう時じゃないと意識しない。
この3つの恒星が大きな逆三角形を描いている。白に青に、とても明るい!

現在地Tarcoolaは、予測図の示した観測ポイントから経度的に西に位置する。
はやぶさ突入の見え始めは、恐らく多少北西気味になるか、ひょっとすると北北西、
若しくは真西かもしれない。
熱圏の高度100km、そんな高いところから1立法メートルの物体が秒速12kmで
燃えながら落ちてくる様子なんて、想像もつかない。
天球が広大すぎて、星が明るすぎて、見当が着かないのだ。
これは是非、ウーメラ砂漠に来て自身の目で見て感じて欲しい感覚だ。
IMG_0389.jpg












(写真の右上に南十字星)

星空に迷う。本当にそんな感覚。


そして、目印になるアークトゥルスが登って来る頃に、はやぶさ帰還の瞬間を迎える。


つづく

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑧

Tarcoolaは現地時刻で18:15。もう暗い。
元は金鉱があったというこの村は、もうほとんどの家屋が廃墟になっていた。

辺りを見渡しながら、I見氏を探しつつ進んでいると、
村に入って左側、1ブロック向こうの路地を挟んだ白壁の平屋の玄関に人影が2人、立っているのが見えた。
よく見るとI見氏じゃないようだが、こちらに大きく手を振ってくれている!
Tarcoolaの村の人が歓迎してくれているのだ!
無事についた、そして歓迎してくれた。
疲れがちょっと吹き飛んだよ。
はやぶさもこんな気持ちになってくれれば嬉しい。

そして進んだすぐ先の右手に近寄ってくる人影が!暗くて顔が見えない。でも間違いない!
人影の前に車を停めて日本語で呼びかけてみた。「お疲れさまでーす!」
「こっちこっちー」と手招き。やはりI見氏だった!
「やっと日本から辿り着きましたよー。」ウーメラ砂漠に響く日本語。
さあ、これでmixa観測隊はTarcoolaに集結した。
言い換えれば、オフ会のメンバーが揃ったのだった(笑)。

「ここの元公民館の裏手に停めていいよ。村の人に確認したから。」
I見氏の指示で、右手廃墟の裏手におかえり号を停車させた。
さすが、現地の大学に勤める研究員。頼れる男。

元公民館の裏手からは真北を見渡せる。
つまり向こうにはWPAの地平線と宵の空。
この空に、今夜はやぶさが現れる。

Tarcoola集結!!
みんなが揃ったところで、改めて自己紹介。握手を交わす。
全員で5人。S木氏、O塚氏、I見氏、Mさん、そして自分。
ツアー準備から今まで、短いようで長かった。
色々あったけれど、よくぞ今、この砂漠にこの場所にみんな無事で…(感涙)。

もうすっかり暗いので、おかえり号の外部常夜灯を点ける。
車のタープを展開して、テーブルをセットする。
おかえり号の常夜灯がイルミネーションの様に彩ってキャンプの雰囲気を醸し出した。
(撮影:O塚)
だが、気温がみるみるうちに下がっていく。
撮影機材を運び出していたが、寒い、なんてもんじゃない。
皆が重ね着をする。気温はまだまだ下がっていくようだ。
WPAはサバンナ気候に当たる。砂漠を体感。

元公民館のすぐ脇に、紺のプリメーラが停まっていた。
そしてバンパーには神奈川日産のステッカー。I見氏の愛車だ。
SAでは唯一の神奈川日産プリメーラなんだそうな。
そしてその横にテントが張ってあった。
ひょっとしてI見氏は今晩ここに野宿するのだろうか?こんなに寒いのに。

気づくと地面が真っ暗で見えない。辺りはもう闇に飲み込まれた。
…いや!見上げれば赤黄橙青白の星々!全天が満天の星空、だ。
周りに照明が無いので、こんなにハッキリと見える。
「うわー…。」
今思い出しても垂涎モノの星空。

やはりアンタレスが特に赤く見える。
任天堂DSを取り出して、星空ナビを起動した。
SAではさそり座の存在感が大きい気がする。
星の密度が高いので、アンタレスのような目印がないと他の星座の見分けがつき難い。
ましてや南半球なので、前述のとおり、日本とは逆さまだ。
DS星空ナビは世界の主な都市の夜空を表示できる。緯度の近いシドニーに合わせた。
画面の星図も反転表示、買って大正解だった。

…しかし冷える。
キャンプテーブルを広げたものの、こんなに寒いのでは、帰還まで5時間近くものんびり待てない。
折角の星空だけど、晩餐は車内にするかな…
そう思っていたら、I見氏がどこからか錆びたドラム缶を運んできた。
手には妙なドーナツ型のLEDライトを持っている。
相当明るい便利アイテムだが、この形状は宇宙との交信用だろうか(笑)。
半壊して崩れ、放置されていた廃材をドラム缶に放り込んで早々に火をつける。
おー、ワイルドだぜ。
火勢が安定してくるとテーブル周りが暖かく過ごしやすくなった。
皆で燃え盛る焚き火を囲む。

「JAXAの観測隊がここに来てるよ!2台のジープに乗って西の丘に登っていったよ。」とI見氏。
やっぱり、このTarcoolaに光学観測班が来てたんだ!
確か、近隣の丘に「カンガルーの丘」と名付けていた。
「自分も丘の方に場所を取ろうと思ってたけど、ジープを見たから。邪魔はできないよね。」
はい、それだけは禁忌。
まさかJAXAとランデブーするとは思わなかった。十二分に気をつけることにした。
そうそう、観測機器に影響が出ないように、はやぶさ突入までに焚き火を落とさなきゃ。

ジープと聞いて思い出した。
「そういえばこの砂漠をレジャーに来てるような様子のジープ数台とスレ違いましたよ。実はウーメラは観光地とか?」
「あ、もしかして、一つ前の村の辺り?…もしそうなら、多分彼らはNASAのチームだ。」

NASAのチームがこちらのルートに来ていた!
これで、ますます観測地の選定に確信が持てた。大正解だ!
「キングーニャには小さな女の子も来てましたよ。NASAはファミリーで来てるんですね、だから最初はレジャーかと。」
「さすがNASA!!」一同爆笑。

「天気もすごく心配だったんですよ。直前の直前まで意見が纏まりませんでした。今はこんなに晴れ渡ってすっかり安心ですけど。」
「あー、天候が回復するのはわかってたよ?特にこの季節の砂漠は、夜になれば一気に雲が晴れるものだから。路面状態も心配だったから、ずっと天気予報もチェックしてたし。」

I見氏かっこいい。


つづく



より大きな地図で はやぶさ帰還 ウーメラ旅行記 を表示

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑦


だんだん日が傾いてきた。ふと、空を見上げると、重要なことに気がついた!
雲がない!!!!
あれだけ地平線の向こうから湧いてきた雲が、僅かに棚引く程度だった。

何かのご褒美だろうか。こんなことがあるんだなあ。
信じてここまで来てみたけれど、やっぱり良かった!! 安心したら気が抜ける。

ああ…良かった。
これで、はやぶさをこの目で見届ける事ができる。
何かに勝ったような、そんな気がした。

するとデッキから、夕日の写真を撮りたい、と声が聞こえた。大賛成。
地平線に沈む太陽は、これだけ運転していても、実はまだ拝めていない。
気を引き締め直して、砂漠を進む。良い撮影スポットがあればいいな。
mioナビを見ると、Tarcoolaまで、もうそんなに離れていない、あと30kmほどだ!

傾く太陽は西の地平線に向かって落ちていく。おかえり号も西へ進む。進行方向に太陽が移り始めてきた。
辺りは暗くなってきているが、眩しい。オレンジの光が膨らんでおかえり号の真正面に落ちてきた。
サングラスも効かない。視界が全部オレンジ色。路面もオレンジ色。これを、オレンジアウトというのか。
事故だけは起こせない。牛やカンガルーが飛び出してきませんように。さらに速度を落として、ゆっくり進む。

そして、まもなく落陽。すごい。仰角0°から太陽の光を正面に浴びている。この世界はなんだろう。
赤い砂漠を走っていたのに。
IMG_0357.jpg













ここで、おかえり号を静かに路肩に止めた。(MAP)

さあ、この世界の記念撮影をしよう。
みんながカメラを手に手に車を降りる。意外と寒い。ドアを開けて道路に降り立った。ビックリした。
地面がクッションのようにフカフカだ!!運転席からはあんなに硬そうな路面に見えたのに。とても柔らかい。
赤い砂を手にとってみて、初めて気がついた。
砂じゃない。パウダーだ。それは、とても細かい赤い粉末だった。
きっと、火星の大地はこんな感じなんだろうな。IMG_0382.jpg















S木氏が車から離れていく。非常に脆い路肩を崩しながら追いかけると、そすぐそこには線路があった。
いつの間にか横断鉄道の軌道とランデブーしていた。O塚氏もこの風景を切り取っていく。そんなO塚氏を隠し撮りする。自分も側にいた人に写してもらった。IMG_0372.jpgIMG_0381.jpg
































もうすぐそこが、Tarcoola村だ。
みんな思い思いの場所で夕日を撮影する。
自分は、夕日をバックにおかえり号を撮影した。IMG_0364.jpg
















真横から指す落陽の光はあっという間に幻想の世界から消えていった。そして、太陽の反対からは真っ暗な夜がやってくる。

夕日が落ちきってしまう前に、おかえり号&4人で集合写真を撮った。ノリノリで撮れた。
この瞬間。将来きっと、大事な写真になるだろう。
IMG_0376.jpg













寒くなってきた。

さてもう一息、と、車に乗り込んだ時に気がついた。床が真っ赤になっていた。
赤い粉末が、車の中まで濛々と侵入してきていたのだ。運動場の臭いの原因はこれだったのだ。
きっとみんなも埃まみれだ。これはまいった。ひとまず床だけ大雑把に掃いて、出発した。

それから20分後、鉄塔が見えてきた。軌道も複雑に交差し始めた。Tarcoolaが近づいてきたのだ。
そして集落が見えた!到着!
人口が5人の村に入村した。
「Tarcoola」と小さく書かれた立て看板。IMG_0417.jpg
















これで、我々は、はやぶさに追いついた。

 

 

つづく

 

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑥

ここまでの道のり、比較的区間によって路面状態が安定しているので、そんな時は自分も空を眺めてみる。ふわーっ、とため息しか出ない。
西に進んでいるので、この方向から地球に向かってはやぶさが帰ってくるんだなあ、と。どんな風に彼を見ることになるのだろう。
顔を上げればそればかり思う。
I見氏は、もうこの道の先を行っているのだろう。

砂漠で見たもの、その③
一本の木。一本しかない。地平線の中にぽつんと立っている。その木が大きいのか小さいのか、遠近感がつかめない。
いつまで走ってもその木がついて来るように見える。本当に不思議な景色。

ポコポコ雲の密度は相変わらず変化なし。ただ、時々ホウキで履いたような切れ間が出てくる。
「前のほう、晴れてきましたよ!」と皆に声をかけてみる。「このまま晴れていけばいいですね」と声が聴こえる。

Grendamboから走り始めて1時間弱、左手に建物が見えてきた。レストハウス?mioナビを見てみると、Kingoonyaという村に着いたことがわかった。(MAP)アウトバック最初の村だ。やっとここ。ドライブインみたいな雰囲気で、立ち寄りやすそう。
大きな鉄塔の前、駐車場に金髪の小さな女の子がいた。後ろに家族がいる。レジャーかな?2家族くらい訪れている様子。
こんな砂漠でも人の姿を見れて少し安心。彼らはおかえり号をずっと見送ってくれた。手を降ればよかったかな。

Kingoonyaを通りすぎて、ここからみるみる内に路面状況が悪化してきた。どうやらここからが本番みたいだ。
Kingoonyaまでは砂利の区間、砂の区間、波轍の区間というように分別されていたが、もうここからはそれらがゴチャ混ぜであった。
ひどいムラになっている。クタクタの視覚に気力を注ぐ。速度は平均で30kmを切っていたと思う。ここからは本当のところ、運転中の景色をあまり覚えていない。

そして、発見した。礫を避けて路面が見えているところを走るのではなく、路肩ギリギリに積もっている砂の上の方が走り易いことを。
砂がクッションになって振動を和らげてくれるんだね。片輪だけでもいい。それからは路肩ギリギリの砂クッションばかりを狙って走り続けた。
なんだか、車の中が埃っぽい気がする。そんな臭いがする。はやぶさ号の換気はシャット状態なのに。運動場のあの匂い。

砂漠で見たもの、その④
厳密には自分は見ていない。目前の路面ばかり見ていたから。助手席に座っていたM氏が見つけて教えてくれた。
200m先の道路を野生の牛の群れが横切ったそうだ。水も何も無いところなのに生きている野生の動物。時々倒れていたのは、彼らから逸れてしまった牛なのだろう。
20頭ほどの群れだったという彼らは、あっという間にいってしまったようだ。そこには僅かな砂塵だけがうっすらと舞っていた。
不思議だったのは、地面に蹄の足跡が見当たらなかったこと。

道は荒れて、狭くなる。普段通行する自動車がごく僅かだという証拠だ。吹き溜まりに枯れ枝が積もっている。
道を横切る溝は相変わらずだが、なんと水溜りがあった。
そうか!この溝はウーメラ砂漠の川だったんだ。あっという間に干上がったその川の水は砂漠に吸われたのだろう。
ここは何もかも、スケールが大き過ぎる。

いくつかの踏切手前で近づいてくる砂塵を見た。偶然踏切手前ですれ違う。白人の運転する4WDだ。スポーツサングラスをしている。
お互いにガン見(笑)。そりゃそうだ、こっちはキャンピングカー。2台目とすれ違う。レンジャーかな?
後に、彼らの正体TarcoolaでI見氏から知ることになる。これには驚いた。
おそらく、この4WDはKingoonyaの仲間だったのだろう。はやぶさを見に来てるのかな?なんておしゃべり。
いづれにしても、この砂漠ではとてもレアな状況だった。

 

細い道路を走っていると、極たまに民家が見える時があった。廃墟かな?と見ているとちゃんと生活の様子があった。
民家は1軒だったり、2軒だったり。玄関から家屋まで遠い。後でGoogleMAPで調べてみよう。(MAP)

ブッシュが濃くなってきて、カラスが飛んでいるのが見えた。そして踏切を越えたすぐ右に石造りの小さな廃墟。
アウトバックに突入したすぐに見かけたそれに似ていた。ひょっとして、ここはオアシスなのだろうか。(MAP)

砂漠で見たもの、その⑤
道幅は狭くなり10mくらい?そこでまた不思議な光景。小さな湖の跡だ!突然現れた凹凸の風景に面食らう。小さな山の回りをまわる道路がまるで湖の周回道路
のよう。でも、その道は途中で湖底まで降りて、また小山を登る。干上がった湖底の奥が白く淡い。塩分だろう。
路肩が崩れている。ここの地盤は軟弱なようだ。印象に残る景色だった。(MAP)

道路脇に生えている樹木から枯れ枝や蔦?のようなものが垂れて道路を塞いでいる。避けきれないので、そのままはやぶさ号で打ち払う。
しかし、路面には最近できたような細いタイヤの轍が残っていた。きっと、I見氏のプリメーラに違いない!先遣隊、ご苦労様!

 つづく

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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑤

Grendambo北側出入口からほんの数百メートル先に西のナラボー平原へ伸びるT字路がある。
もうそこからは未舗装道路、赤茶けた砂のオフロードだ。目指す村はまだまだ先にある。
I見氏は夕方には村に到着予定とのことだから、既にこの道に入ってるはず。
見た目は砂漠といえども、かなりフラットで走り易そうだった。時速60キロほどで走る。
オフロードに入ってすぐの右手に石造りの廃墟がポツンとあった。一般家屋のよう。アボリジニの生活の跡だろうか…。(MAP)

アウトバック(砂漠)の道を進む。コレならいける…と思いきや!

とんでもない道だった。路盤は固く、非常にバンピー。雨で流されてきたと思われる赤い砂が、表面に波模様を描き、砂を堅くプレスしたような下地を覆い隠している。
その中に大小の小石が無数にあった。
4WDの大口径タイヤならともかく、4人乗って装備重量がかさむキャンピングカーには過酷な状況だった。
オフロードに入って3つ目の小さな丘を超えた辺りから、時速を30kmまで落とした。あまりの振動で後部の荷物がすべて床に落ちてしまった。
この揺れだと食器類は言うまでもなく、レンジや冷蔵庫、プロパンガス、水タンクなどにまで、ダメージが出る恐れがあった。ズババババーンとおかえり号が跳ねる度、
後部デッキのS木氏とO塚氏が必死になって荷物や扉を押さえている。
もう景色なんて見てる余裕はなかった。20m先の赤い路面だけに集中してステアリングを握る。なるべくフラットなラインを探っておかえり号を操る。
それでも不意に自然の溝が現れて、ブレーキを強めに踏むと車体がゆっくり横を向いてドリフト状態になった。

あとから聞いた話だが、このアウトバック(砂漠)の道路で起きた事故や故障は、自動車保険対象外という取り決めがあるそうだ。
走っちゃダメとは聞いてたけど。

もちろん、Stuart Highwayと同じく、牛やカンガルー、エミューが飛び出してくる、というかその確率は桁違いに上がる。
まぁ、幸いにも危険な場面には遭遇してないけれど。

大自然の真っ只中。当然、電気も街灯もないから何も無いから、日が暮れる前に、闇に包まれてしまう前にTarcoolaに着かなければ!!
でも、この速度だといったいどれだけ掛かるんだろう。。。

15分ほど走ると多少目が慣れてきた。路面にピントが合ってくる。平均時速40~50kmほどで走れるようになった。
ただ、やっぱり砂利の多い区間や轍のひどい部分は唐突にやってくるので、時々ズダダダダーーンとデッキを揺らしてしまう。
でも誰も文句は言ってこなかった。申し訳ない。

砂漠で見たもの、その①
この砂漠の道路に並行して大陸横断鉄道が走っている。目的地の村にもこの駅があった。もちろん無人駅。道路と鉄道が交差するところ、つまり
踏切(MAP)があるのだが、もちろん遮断機や警報機はない。一直線のレールの向こうから列車がやってくるのだから、急ブレーキがかけられないおかえり号は
充分に方向を確認して、ゆっくりとレールを越える。バッタンガッタンとデッキ全体が鳴る。
最初の頃はとても小さな丘にしか見えなかった。レールが見え始めてからブレーキをかけると慣性で大きな車体が滑る。砂のせいで路面摩擦係数μがとても低いから。
減速しきれずにレールを越えると激しい揺れ。コレには懲りた。
ただ、踏切を越える際、果てしない地平線の向こうから一直線に延びてきて、一直線に延びてゆくこの砂漠の中の唯一の人工物を見て、なんとも言えない感動を受けた。
すごい所に来てしまったなあ。
そのうち、踏切の手前は大きなカーブがあることを学習したので、時々は減速が間に合わないものの、落ち着いてクリアしていく。

砂漠で見たもの、その②
Stuart Highway上にあったモノと同じ、グリッド。
有蹄類が道を進めないように地面に設置してあるもの。
これも突然現れる。グリッドはレールを短く切ったものを複数並べたものだから、踏切よりもダメージを受ける。
こんな砂漠の中にも時々設置してあるのだから、頻繁に野良牛が出るのだろう。
小さな丘の形は踏切と同じだが、カーブのような前触れとなるような目印がないものだから、時々突っ込んでしまう。

目前にある砂の路面と障害物。とにかくそこから目が離せない。同乗している3人は景色を楽しめているのだろうか。
360度の地平線、砂の赤とブッシュの緑、空の青と雲の白。ここにはその4色しか存在しない。

 

つづく


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