はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑦
だんだん日が傾いてきた。ふと、空を見上げると、重要なことに気がついた!
雲がない!!!!
あれだけ地平線の向こうから湧いてきた雲が、僅かに棚引く程度だった。
何かのご褒美だろうか。こんなことがあるんだなあ。
信じてここまで来てみたけれど、やっぱり良かった!! 安心したら気が抜ける。
ああ…良かった。
これで、はやぶさをこの目で見届ける事ができる。
何かに勝ったような、そんな気がした。
するとデッキから、夕日の写真を撮りたい、と声が聞こえた。大賛成。
地平線に沈む太陽は、これだけ運転していても、実はまだ拝めていない。
気を引き締め直して、砂漠を進む。良い撮影スポットがあればいいな。
mioナビを見ると、Tarcoolaまで、もうそんなに離れていない、あと30kmほどだ!
傾く太陽は西の地平線に向かって落ちていく。おかえり号も西へ進む。進行方向に太陽が移り始めてきた。
辺りは暗くなってきているが、眩しい。オレンジの光が膨らんでおかえり号の真正面に落ちてきた。
サングラスも効かない。視界が全部オレンジ色。路面もオレンジ色。これを、オレンジアウトというのか。
事故だけは起こせない。牛やカンガルーが飛び出してきませんように。さらに速度を落として、ゆっくり進む。
そして、まもなく落陽。すごい。仰角0°から太陽の光を正面に浴びている。この世界はなんだろう。
赤い砂漠を走っていたのに。
ここで、おかえり号を静かに路肩に止めた。(MAP)
さあ、この世界の記念撮影をしよう。
みんながカメラを手に手に車を降りる。意外と寒い。ドアを開けて道路に降り立った。ビックリした。
地面がクッションのようにフカフカだ!!運転席からはあんなに硬そうな路面に見えたのに。とても柔らかい。
赤い砂を手にとってみて、初めて気がついた。
砂じゃない。パウダーだ。それは、とても細かい赤い粉末だった。
きっと、火星の大地はこんな感じなんだろうな。
S木氏が車から離れていく。非常に脆い路肩を崩しながら追いかけると、そすぐそこには線路があった。
いつの間にか横断鉄道の軌道とランデブーしていた。O塚氏もこの風景を切り取っていく。そんなO塚氏を隠し撮りする。自分も側にいた人に写してもらった。
もうすぐそこが、Tarcoola村だ。
みんな思い思いの場所で夕日を撮影する。
自分は、夕日をバックにおかえり号を撮影した。
真横から指す落陽の光はあっという間に幻想の世界から消えていった。そして、太陽の反対からは真っ暗な夜がやってくる。
夕日が落ちきってしまう前に、おかえり号&4人で集合写真を撮った。ノリノリで撮れた。
この瞬間。将来きっと、大事な写真になるだろう。
寒くなってきた。
さてもう一息、と、車に乗り込んだ時に気がついた。床が真っ赤になっていた。
赤い粉末が、車の中まで濛々と侵入してきていたのだ。運動場の臭いの原因はこれだったのだ。
きっとみんなも埃まみれだ。これはまいった。ひとまず床だけ大雑把に掃いて、出発した。
それから20分後、鉄塔が見えてきた。軌道も複雑に交差し始めた。Tarcoolaが近づいてきたのだ。
そして集落が見えた!到着!
人口が5人の村に入村した。
「Tarcoola」と小さく書かれた立て看板。
これで、我々は、はやぶさに追いついた。
つづく