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はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑭

あまりの寒さにじっとしているのが辛いが星空から目が離せない。

辺りを見ても暗くて誰の顔も見えない。
でも、時間はあるはず。突入予定の時刻までは。

23:09
突入12分前になった。ガンガンと音がして、I見氏がドラム缶の火を落としている。
頬に当たる炎の光が息を潜めて、周囲の気温が一気に下がった気がした。

そこにはむき出しの砂漠の夜が横たわっていた。
星々が鋭い光を放っている分、明暗のコントラストが強かった。
ここには間接光がないのだ。地上がこんなに暗くなるとは。
隣の廃屋も闇に溶けて、じっと星空を見上げているよう。
正しい表現か分からないけど、地平線の向こうまで、まるで広大なプラネタリウム。

撮影のため、ビデオカメラは三脚に据えているのだが、実はデジタル一眼の分の
三脚が無かった(!)ので、スーツケースを借りて無理やり台座にしていた。
まず、目標星のアークトゥルスを捉えるために一眼の電源を入れてファインダーを覗いてみた。
クーパーピディの試写で感じていた不安が的中した。
やはり、この一眼は視野角が狭い。 
18ミリ相当のレンズだから広角のはずなのに。
(この原因は帰国後に理解した。)
一か八かアークトゥルスだけを狙ってフォーカスするしかない。
10分後の位置を見越して、ゲンマと組んだ逆三角が視野の真ん中に来るようにカメラを固定し、
マニュアルフォーカスにしてピントを無限側にいっぱいまで回しレリーズを伸ばす。
シャッタースピードはバルブモード、ISO400、F値4.0。
どうか、この狭いファインダーの中にはやぶさの軌跡を捉えますように・・・。

そしてスーツケースに躓かないよう気をつけながらビデオカメラの電源を入れた。
こちらは夜視モード&花火モードにしてある。
やはりモニターは真っ暗、しかし、やはり星の一片の輝きも捉えられていない。
逆にバックライトの漏れ光が眩しいくらい。
ビデオも一か八かに賭けるしかない。
バッテリー節約のため、一旦スタンバイモードに。

木の葉のざわめきも無い。風の通り過ぎる気配も無い。
コウモリの鳴き声だけが頭上を飛び交う。
冷気が深々と体温を奪っていく。その音が足元から聞こえた気がした。

本体とカプセルを見分けることなんて出来る…?
はやぶさは約1m×1m×1.2m程度の長方体、カプセルなんて約40センチ?
一瞬で大気に溶けてしまいそう。
爆発する様に輝いて見えるのかな。
火花の様に小さく弾けて消えるのかな。
遥か100km先のそれは地上から見えるのかな。
見落とすくらい仄かな光だったらどうしよう。
視力が悪いことが悔しい。
目を凝らして探してるうちにはやぶさが散ってしまうかもしれない。

懸命に頭の中で、様々なシュミレーションをする。

そして突入位置はあくまで予測のもの・・・。

腕時計を見た。
蛍光塗料の針が示した時刻は23:15
突入6分前

また見る。
突入5分前
乾いた空気を吸いこむ。そして、
「ビデオスタートします。」と小さくつぶやいた。



つづく

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