はやぶさを現地でお迎え オーストラリア5日目 帰還当日 ⑬
2012/02/19 13:45:41
はやぶさのカプセル切り離し時刻は過ぎた。
予定通りシーケンスを完了できただろうか…。
この時、不思議なことだが、はやぶさの最後について感慨に浸る雰囲気はなかった。
高揚と疲労のせいだろうか。期待と不安のせいだろうか。
まな板の上の鯛になった気分だった。
パソコンの起動がカリカリと進まず、幾ばくか時間が過ぎてしまった。
結局、全話観ると帰還に間に合わないので、数話割愛して1話、4話、5話、最終話をセレクト。
どうして皆にDVDを観てもらおうと考えたのか。
まあ、正直なトコロ自分が休める時間が欲しかったという理由もあった。
初めての海外ドライブで大型車の長距離運転。野生動物と衝突の危険。
天候不順。ダート走行。友人らの命も預かっている。
ここまで走った距離、1,700㌔弱。
そして、旅程が短い仲間もいる。
今夜中にこの村を出発しなくてはいけないのだ。
何より、絶対、はやぶさ帰還の瞬間を見逃す訳にはいかない。
満身創痍で地球に辿り着いたはやぶさが使命を果たし消え去ってしまう姿を、
日本人として、しっかりとこの目で見届けたい。
そのためにここに来た。
だから今は休息が欲しかった(笑)。
……。
どうやら休めたようで、自分には2時間ほど記憶がない。
パソコンが不調で何度も止まるわけだけど、目は瞑っていられた。
最終話、地表に「オカエリナサイ」のイルミネーション。ファンファーレと共にエンドロールが流れる。
みんなウトウトしていた。
しかし作品から伝わってきた何かが有ったようで、
そして、目の前に迫っている現実に背を押されたのか皆一斉に車の外に飛び出した。
主人公は1万2千年かけて地球に帰ってきた。
はやぶさは7年掛けて地球に帰ってくる。
これから本当の「オカエリナサイ」を伝えるんだ。
時刻は現地時刻22:55、帰還まであと25分。
「寒っ」「寒いって」
車外は一段と冷え込んでいた。間違いなく氷点下を下回っている。
車の中とは天国と地獄だった。
I見氏が急いでドラム缶の火を起こす。
種火は残しておいたのでこの寒さでも火勢はすぐに戻った。
車外灯を点けて機材チェック。空気は乾燥しているので機材に霜が降りていることはない。
北の空を見上げる。快晴を維持!
…いや、僅かばかりの薄雲せいか透明度が落ちてきているが、観望に支障はない。
この時刻、既にはやぶさは地球の影に没入していて、全機能を停止している。
シーケンスフルコンプリート。
全てを終えた彼は何を思い、地球を見つめているのだろう。
そして慣性で飛んでいるコースは、一直線にこのウーメラ砂漠を目指しているはずだ。
時刻は23:05、帰還まであと15分。
火の明るさに引き寄せられたのか、星空の中をコウモリがキッキッと鳴きながら飛んでいる。
目印になるアークトゥルスはさっきより左手(西)に移動して、高度を上げている。
資料の図に示された位置に来ていた。
全ての星が本当に図の位置どおりだ。
私達がやってきた東の空に昼間見た雲が戻ってきていた。
そして北西の空も少しの筋雲が出てきた。上層雲だ、高い。
しかし、はやぶさは更に遥かその上を飛んでくる。
大丈夫、覆ってはこない。このまま視界を維持出来そうだ。
皆それぞれ配置に付く。
もう、だれも動かない。
つづく
予定通りシーケンスを完了できただろうか…。
この時、不思議なことだが、はやぶさの最後について感慨に浸る雰囲気はなかった。
高揚と疲労のせいだろうか。期待と不安のせいだろうか。
まな板の上の鯛になった気分だった。
パソコンの起動がカリカリと進まず、幾ばくか時間が過ぎてしまった。
結局、全話観ると帰還に間に合わないので、数話割愛して1話、4話、5話、最終話をセレクト。
どうして皆にDVDを観てもらおうと考えたのか。
まあ、正直なトコロ自分が休める時間が欲しかったという理由もあった。
初めての海外ドライブで大型車の長距離運転。野生動物と衝突の危険。
天候不順。ダート走行。友人らの命も預かっている。
ここまで走った距離、1,700㌔弱。
そして、旅程が短い仲間もいる。
今夜中にこの村を出発しなくてはいけないのだ。
何より、絶対、はやぶさ帰還の瞬間を見逃す訳にはいかない。
満身創痍で地球に辿り着いたはやぶさが使命を果たし消え去ってしまう姿を、
日本人として、しっかりとこの目で見届けたい。
そのためにここに来た。
だから今は休息が欲しかった(笑)。
……。
どうやら休めたようで、自分には2時間ほど記憶がない。
パソコンが不調で何度も止まるわけだけど、目は瞑っていられた。
最終話、地表に「オカエリナサイ」のイルミネーション。ファンファーレと共にエンドロールが流れる。
みんなウトウトしていた。
しかし作品から伝わってきた何かが有ったようで、
そして、目の前に迫っている現実に背を押されたのか皆一斉に車の外に飛び出した。
主人公は1万2千年かけて地球に帰ってきた。
はやぶさは7年掛けて地球に帰ってくる。
これから本当の「オカエリナサイ」を伝えるんだ。
時刻は現地時刻22:55、帰還まであと25分。
「寒っ」「寒いって」
車外は一段と冷え込んでいた。間違いなく氷点下を下回っている。
車の中とは天国と地獄だった。
I見氏が急いでドラム缶の火を起こす。
種火は残しておいたのでこの寒さでも火勢はすぐに戻った。
車外灯を点けて機材チェック。空気は乾燥しているので機材に霜が降りていることはない。
北の空を見上げる。快晴を維持!
…いや、僅かばかりの薄雲せいか透明度が落ちてきているが、観望に支障はない。
この時刻、既にはやぶさは地球の影に没入していて、全機能を停止している。
シーケンスフルコンプリート。
全てを終えた彼は何を思い、地球を見つめているのだろう。
そして慣性で飛んでいるコースは、一直線にこのウーメラ砂漠を目指しているはずだ。
時刻は23:05、帰還まであと15分。
火の明るさに引き寄せられたのか、星空の中をコウモリがキッキッと鳴きながら飛んでいる。
目印になるアークトゥルスはさっきより左手(西)に移動して、高度を上げている。
資料の図に示された位置に来ていた。
全ての星が本当に図の位置どおりだ。
私達がやってきた東の空に昼間見た雲が戻ってきていた。
そして北西の空も少しの筋雲が出てきた。上層雲だ、高い。
しかし、はやぶさは更に遥かその上を飛んでくる。
大丈夫、覆ってはこない。このまま視界を維持出来そうだ。
皆それぞれ配置に付く。
もう、だれも動かない。
つづく
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